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最終更新日: 2024-04-23 12:41:29
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2024年02月29日 12:38
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東アジア文字考~漢字を巡る遥かなる旅 第10回 水間一太朗
ナム・ジュン・パイク(白南準)と漢字


漢字は絵画である

漢字は絵画である。それも非常に優れた研ぎ澄まされた抽象画だといえる。漢字文化圏以外に住む人々であっても初めて漢字に触れる時、その仕組みが理解できると驚嘆の声を上げる。
『木』の字は一本の樹木の姿を抽象化したものだ。『林』は木が二本並んだ状態。『森』は木がたくさんある状態だ。実にわかりやすい。それが解れば親しみの度合いが急に増すというものだ。だから漢字は文法など解らずとも一度覚えてしまえばなんとか通じるツールとなる。また、絵画であるからイメージが一瞬にして強く伝わる。だらだらと話し言葉を連ねる必要はない。ここに漢字の強みがある。
しかし、漢字には、アルタイ諸語(日本・韓国・モンゴルなど)のような表音記号はない。そこで、表意文字と表音文字の双方を使いこなす文化が漢字文化圏で生まれた。細やかな表現においては、周辺諸国の漢字混じり表記の方が断然優れている。漢字の本家である中国ではついぞこのような文化は生まれなかった。その理由は中華思想が邪魔をして周辺諸国の文化を受け入れることが困難であったからである。
この絵画から発展した漢字は想像力を喚起する。中国を離れて世界中の多くのアーティストが漢字に夢中になった。二十世紀に抽象表現主義で旋風を巻き起こしたジャクソン・ポロックは、漢字の筆のストロークに多大な影響を受けた。アクションペインティングの始まりである。また、ビデオアートの草創期に世界を席巻したナム・ジュン・パイクもまた、漢字に深く傾倒したアーティストであった。


ナム・ジュン・パイクと白川静

一九三二年、ナム・ジュン・パイク(白南準)は、日本統治時代の京城(現在のソウル)に生まれた。美術史にその名を刻んだ韓国を代表するアーティストである。
東京大学文学部の美学・美術史学科に学び、美学を竹内敏雄に、音楽美学を野村良雄に、作曲を諸井三郎に、ピアノを宮原敦子と属澄江に学んだ。在学中から現代音楽に深く触れた彼は、既存の美学の枠を超え、その後は融合の芸術を生み出すことになる。後にヴィデオ彫刻で著名な久保田成子と結婚した。彼が名前の表記を『白南準』ではなく『ナム・ジュン・パイク』とするのは芸術家としての出発がドイツであり、その時のアーティスト名に由来する。
ナム・ジュン・パイクの芸術の根幹は、『諧謔精神』『テクノロジーとメディアの人間化』『東洋と西洋の融合』にある。諧謔精神とは江戸やローマなど大衆文化の成熟で発生する滑稽で粋な精神をいう。
また、彼は瞬間で消える媒体である『ビデオアート』を多用した。その哲学的理由の一つは『記録に残さない』という点にある。漢字はその逆で、記録を刻むものである。彼は韓国のルーツを北方のモンゴルに置いた。モンゴル系民族は古くから記録をあえて残さない。舞踊や歌を中心として文化を伝えたのはそのような理由による。彼は『記録に残さない文化(モンゴル)』と『記録に残す文化(中華)』の融合を意図的に仕組んだのだ。
その彼は、韓国のメディアにインタビューされることが多々あった。その度に彼はこういったという。「韓国が一流国になるためには漢字を勉強することだ」と。また彼は、編集者の松岡正剛と親しかったが、「日本の人は白川静を読まなければだめよ」と何度も語ったという。
白川静とはいうまでもなく漢字研究の大家で甲骨文字の原意を探った世界的権威である。ナム・ジュン・パイクから見れば、韓国人も日本人も、漢字文化圏の人々は皆、漢字の成り立ちまでをも深く知らなければならないというのだ。その示唆はまことに大きいといわねばなるまい。
(つづく)

水間 一太朗(みずま いちたろう)
アートプロデューサーとして欧米各国、南米各国、モンゴル、マレーシア、台湾、中国、韓国、北韓等で美術展企画を担当。美術雑誌に連載多数。神社年鑑編集長。神道の成り立ちと東北アジア美術史に詳しい。

 

写真上:日本のNICAFのポスターになったナム・ジュン・パイクの作品

写真下:江戸の諧謔精神に精通していたナム・ジュン・パイク

2402-29-06 6面
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