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2023年06月06日 12:27
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ソウルを東京に擬える 第20回 市場と商店街
買い物に食べ歩きに 市場・商店街活性化への模索も

 日本でいう商店街は韓国では市場、とりわけ伝統市場や在来市場と呼ばれ、人々の暮らしを支えている。ソウル都心の市場は活気に満ち、外国人観光客も多いが、最も有名なのは南大門市場だ。朝鮮初期から市ができ、そのルーツは600年を超えるが、常設市場となったのは1897年のことだ。数棟におよぶ専門街を含めて1万店がひしめき、衣類やメガネ、ペット用品まで「ないものはない」というほど、あらゆるものが揃う。その規模には及ばないが、店先に品物が吊るされ、アジアの市場の雰囲気が漂う上野アメ横はそれに近い存在だ。今年5月に上野アメ横と姉妹提携を結び、相互にPRを行うのは東大門近くの広蔵市場だ。広蔵市場は1905年に開かれた市場で、韓服や反物なども扱うが、2・3階には知る人ぞ知る古着市場があり、日本からビンテージ品を探しに訪れる客もいる。市場内の飲食街ではひょいと椅子に腰かけ、地元の人と触れ合いつつ、ピンデトクやカルグクスなどが味わえる。ユッケが味わえる横丁も人気だ。

ソウル・南大門市場

各地から様々な食材が集まるソウルの台所といえば、京東市場だ。朝鮮戦争後に清凉里駅を通して農産物が運ばれたことに由来するが、東京では貨物駅が併設されていた秋葉原駅近くに昭和初期まであった巨大市場、神田青果市場を思わせる。京東市場では高麗人参やえごま油なども手に入り、隣のソウル薬令市には韓薬材を求めてやってくる客が多い。そんな都会の市場でも若い世代を取り込もうと、2019年には青年モールという名でカフェや子どもの遊び場を作ったり、22年末頃には30年近く放置された市場内の廃劇場を改装し、そこにスターバックスを誘致するなど、既成概念にとらわれない施策を打ち出している。また都心では東大門に近接した新堂駅近くのソウル中央市場が「国内最大」と掲げるが、食材や日用品なども扱い、地下には刺身店街まである。
そして地元ローカルな市場に上手く観光客を取り込んだのは、景福宮の西側にある通仁市場だ。市場内に惣菜店が多いことに着目し、12年から始めた「お弁当カフェ」が人気で今や定着している。各店舗に並ぶおかずを小分け購入し、弁当箱に詰めて、市場内の食堂で味わえるシステムで、庶民的な味を気軽に楽しめる。惣菜店が多いことからは、台東区鳥越のおかず横丁が思い浮かんだ。同区内では上野・浅草に観光客が多いこともあり、商店街が賑わっている。他にも夕やけだんだんと呼ばれる階段が有名な荒川区の谷中銀座をはじめ、いわゆる「谷根千」の下町の情緒ある商店街は、独立門駅近くの霊泉市場、梨大駅の隣駅そばの阿〓市場などに例えられそうだ。
最近では都心から少し離れた市場にも日本のテレビ局がロケに訪れるほどだが、麻浦区の望遠市場もそのひとつで、屋台フードが手ごろに味わえることで話題のアーケード市場だ。韓国では「水曜美食会」というグルメ番組がその火付け役となった。食べ歩きが楽しめる名物商店街としては、東京一長いという品川区の戸越銀座のほか、北区の十条銀座、江東区の砂町銀座などだろうか。両都市とも地元に密着した市場や商店街を挙げればきりがない。

東京・上野アメ横

そして市場と商店街の事情にも触れておこう。韓国語では商工業者にあたる「小商工人」という言葉がある。小規模の事業者にとって脅威なのは、大型店の存在だ。日本ではその出店に対する規制を緩めてきたが、韓国では在来市場を守るために規制をかける流れだ。例えば大型マートは日曜日に月2度の休業が義務付けられている。しかし青果・生鮮などは市場のほうが全体的に価格が安く、大型マートは太刀打ちできないという話も聞く。単に商店街=市場かといえば、その背景は少々異なるのである。

2023-06-07 6面
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